「放課後等デイサービスの開業を考えているけれど、何から始めればいいか分からない」「申請手続きが複雑で不安」——そんな声をよくお聞きします。
私自身、行政書士であると同時に、小学生の我が子が放課後等デイサービスを利用する保護者でもあります。事業者目線と利用者家族目線、両方から見えてきた『本当に大切なこと』も含めて、埼玉県での開業までの流れを解説します。

目次
放課後等デイサービスとは?
放課後等デイサービスとは、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業のひとつで、障害のある6歳から18歳までの就学児童を対象に、学校の授業終了後や長期休暇中に、生活能力の向上や社会との交流促進を目的とした支援を行うサービスです。「障がい児の学童保育」と表現されることもあり、保護者の就労支援という側面からも社会的なニーズが高まっています。
利用にあたっては、お住まいの市町村が発行する「通所受給者証」が必要で、原則として利用料の1割が自己負担、残り9割は公費でまかなわれます。
なお、未就学児(0歳〜小学校就学前)を対象とする「児童発達支援」と多機能型として併設するケースも多く、埼玉県内でもさいたま市・川口市・川越市・越谷市・所沢市・春日部市など人口集積地を中心に多機能型事業所が増えています。
開業に必要な5つの要件
法人格の取得
放課後等デイサービスの指定を受けられるのは法人のみです。合同会社(設立費約6万円)、株式会社(約20〜25万円)、NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人等から選択します。定款の事業目的に「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」が明記されているかを必ず確認してください。
人員配置基準
| 職種 | 必要人数 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 管理者 | 1名(兼務可) | 事業所全体の運営管理 |
| 児童発達支援管理責任者(児発管) | 1名以上(常勤・専任) | 個別支援計画の作成、職員指導 |
| 児童指導員または保育士 | 2名以上(うち1名以上常勤) | 直接的な療育・支援業務 |
このうち最大の難関が「児発管」の確保です。福祉・医療・教育分野での実務経験(5〜8年程度)に加え、埼玉県(または各中核市等)が実施する基礎研修・実践研修の修了が必要で、有資格者は全国的に不足しています。法人設立と並行して早期に確保活動を始めることが必須です。
設備基準
国基準では指導訓練室は児童1人あたり2.47㎡以上ですが、川越市は条例で同基準(2.47㎡以上)を明示しているなど、自治体ごとに独自基準・運用がある場合があります。物件選定前に必ず管轄の指定権者に事前相談してください。
そのほか、相談室(プライバシー確保)、事務室(施錠可能)、洗面所・トイレ等が必要です。消防法・建築基準法・水防法(避難確保計画)の遵守も求められます。特に川口市は浸水想定区域・土砂災害警戒区域内の場合、避難確保計画書の確認書添付を求めています。
運営基準
運営規程、重要事項説明書、虐待防止・身体拘束適正化・感染症対策・業務継続計画(BCP)・苦情処理・事故対応の各マニュアル整備が必要です。また、令和6年4月から支援プログラムの作成・公表が義務化され、未公表の場合は減算対象となります(川口市は令和7年4月以降「支援プログラム未公表減算」を明記)。
埼玉県で開業する場合の流れとスケジュール
埼玉県は指定権者が「県+5市」の合計6つに分かれます。これは全国でもトップクラスに細分化されており、所在地によって手続きと締切が大きく異なるため、最初の確認が極めて重要です。
| 事業所所在地 | 指定権者 |
|---|---|
| さいたま市 | さいたま市障害政策課 |
| 川越市 | 川越市障害者福祉課 |
| 川口市 | 川口市障害福祉課 |
| 越谷市 | 越谷市障害福祉課 |
| 和光市 | 和光市障害福祉課 |
| 上記5市以外(所沢・春日部・上尾・草加・熊谷・狭山・入間など全市町村) | 埼玉県福祉部障害者支援課 |
※さいたま市は政令指定都市、川越市・川口市・越谷市は中核市、和光市は事務処理特例による移譲のため独自の指定権限を持ちます。最新の連絡先は必ず各自治体公式サイトでご確認ください。
埼玉県で開業する場合の流れ(さいたま市、川越市、川口市、越谷市、和光市除く)
- 市町村への意見確認(事前協議前に必須)
- 開設する市町村の障害主管課に対して開設意見を確認する
- 「支障あり」「どちらとも言えない」の場合は指定されないことがある
- 事前協議:事業開始月の3か月前まで(例:4月1日開所なら1月末日まで)
- 指定申請書の提出期間:事業開始月の前々月10〜20日(例:4月1日開所なら2月10〜20日)
- 補正期限:前月10日まで(例:4月1日開所なら3月10日まで)
- 審査・現地確認
- 指定(毎月1日付)
※さいたま市、川越市、川口市、越谷市、和光市については各指定権者のホームページにてご確認ください。
全体スケジュールの目安
開業準備全体としては、法人設立から指定取得・事業開始まで現実的には1年程度が目安です。特に川越市は4か月前、川口市・越谷市は3か月前、埼玉県は3か月前、さいたま市は2か月前と、自治体ごとに事前協議のタイミングが大きく異なるため、所在地確定後すぐに管轄の手続きスケジュールを確認することが重要です。
申請書類の主なもの(障害児通所支援)
指定申請書・付表、運営規程、勤務体制一覧表、組織体制図、平面図、設備・備品一覧、児発管および職員の経歴書・実務経験証明書、誓約書、社会保険・労働保険加入確認票、暴力団排除誓約書、給付費算定体制届出書、苦情解決措置の概要、収支予算書、協力医療機関協定書、非常災害対策計画書・避難確保計画書、支援プログラム公表届出書、市町村の意見書(県管轄の場合)等。
※最新の様式を必ず管轄の指定権者公式サイトからダウンロードしてください。
並行して進めるべき準備
物件探し、児発管・スタッフの募集、利用者の募集(相談支援事業所・特別支援学校・市町村窓口への挨拶回り)を同時並行で進めます。特に児発管の確保が間に合わないと、人員配置基準を満たせず開業時期が後ろ倒しになるため、法人設立と同時期から動き出すことをおすすめします。
開業資金はいくら必要?
物件取得費、内装工事費、備品費、人件費(開業後3〜6か月分の運転資金)など、おおむね1,000万円〜2,000万円程度が必要とされます。埼玉県は東京都心と比べて物件費が抑えられる一方、さいたま市・川口市・川越市など人口集積地は競合事業所も多いため、立地選定が事業継続のカギになります。
自己資金だけでまかなえない場合は、日本政策金融公庫の創業融資や、武蔵野銀行・埼玉りそな銀行・地元信用金庫の制度融資が選択肢となります。
利用者家族の視点から見た「選ばれる事業所」とは
埼玉県内の事業所は人口集積地を中心に増加傾向にあり、保護者は複数の事業所を比較した上で利用先を決めているのが実情です。
先にも記述したように私の子どもも放課後等デイサービスに通っています。そのうえで保護者が本当に重視するポイントは4つあります。
1つ目はスタッフの定着率。先生が次々入れ替わる事業所では、子どもが安心して通えません。開業時から働きやすい職場環境を整えることが「選ばれる事業所」への近道です。
2つ目は送迎の柔軟性。特別支援学校への送迎対応や長期休暇中の朝からの受け入れなど、家庭の実態に寄り添えるかが利用継続の分かれ目です。埼玉県は通勤エリアが広く、送迎ルートの設計力がそのまま競争力になります。
3つ目は療育プログラムが「わが子に合っているか」。保護者が見ているのは謳い文句ではなく、子どもが楽しそうに通い、できることが増えているかという結果です。
4つ目は保護者との連携。連絡帳の丁寧さ、送迎時の声かけ、定期面談——こうした日々の積み重ねが信頼を育てます。
よくあるご質問(FAQ)
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児発管が見つからないのですが、どうすればよいですか?
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福祉系の人材紹介会社の活用、業界の知人ネットワークからの紹介、すでに県内の福祉事業所で働いている方への声かけが主な方法です。埼玉県の児発管研修は年度ごとに開催され定員制のため、研修スケジュールを早めに確認し、法人設立と同時並行で動き出すことをおすすめします。
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マンションの一室で開業できますか?
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物件が設備基準と関係法令(消防法・建築基準法・用途地域)を満たせば可能です。ただし用途変更や消防設備の追加工事が必要なケースが多いため、契約前に必ず指定権者へ事前相談してください。特に川口市は水害ハザードマップでの確認も必須です。
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開業後、何人の利用者が集まれば経営は安定しますか?
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定員10名の事業所の場合、1日の平均利用児童数が8名前後で安定経営の目安とされます。利用者が定員に達するまで通常半年〜1年程度かかります。
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多機能型(児童発達支援との併設)にするメリットはありますか?
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未就学児から高校生まで一貫して受け入れられるため、利用者の幅広い利用と事業所収益の安定化につながります。
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行政書士に依頼すると費用はどのくらいかかりますか?
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指定申請サポートの相場は30万円〜80万円程度です。法人設立や事業計画書作成、創業融資サポートを含むかで変動します。当事務所では初回相談無料です。
まとめ
放課後等デイサービスの開業は、法人設立から指定取得まで現実的には1年程度を見込んだ計画が必要です。埼玉県は指定権者が「県+さいたま市・川越市・川口市・越谷市・和光市」の6区分に分かれる点が最大の特徴で、所在地によって事前協議の期限が大きく異なります。川越市は4か月前、川口市・越谷市・埼玉県は3か月前、さいたま市は2か月前——早めの動き出しと管轄の正確な把握がポイントです。
そして開業後に成功するかどうかは、「保護者と子どもから選ばれ続ける事業所」をつくれるかにかかっています。
「何から始めればいいか分からない」「物件は決めたが要件を満たしているか不安」「児発管が見つからない」——どんな段階のご相談でも構いません。初回相談は無料です。
※本記事の情報は2026年6月時点のものです。最新の運用については必ず指定権者にご確認ください。
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【独自指定権者】 さいたま市、川越市、川口市、越谷市、和光市
引用・参考:
- 埼玉県「障害児施設指定の手続」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0605/s230/index.html
- さいたま市「事業者指定の手続」 https://www.city.saitama.lg.jp/002/003/004/003/007/p018259.html
- 川口市「指定申請について(障害児通所支援)」 https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01070/060/shisetsu/22844.html
- 川越市「指定障害児通所支援事業者の指定等」 https://www.city.kawagoe.saitama.jp/kenko/fukushi/1006736/1006825/1006836.html
- 越谷市「新規指定申請」 https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/fukushi/syogaisien/shogaijitsuusyo_jigyosya/koshigaya_contents_201900627.html
- 和光市「施設・事業者指定の手続き」 https://www.city.wako.lg.jp/kenko/shogai/1009668/1003689/1013389.html
