【2026年8月版】永住許可のルールがこう変わる — 改定案を現行と徹底比較
2026年8月4日、出入国在留管理庁が「永住許可に関するガイドライン」の改定案を公表し、同時にパブリックコメント(意見公募)を開始しました。締切は2026年9月4日です。
これまでA4で1ページ弱だったガイドラインが、13ページに増えました。単に長くなっただけではなく、収入・年金・日本語・制度の理解・子どもの就学という新しい審査項目が加わり、全体としてかなり厳しい内容になっています。
この記事では、外国人の方にもわかるように、現行ルールと改定案を対比表で整理します。
重要:これは「案」であり、まだ確定していません。ただし一部はすでに申請中の人にも適用される方針なので、早めの確認をおすすめします。

1. 大きな変化:考え方そのものが変わる
改定案には、これまでなかった一文が入りました。
「永住者」の在留資格は、活動や在留期間の制限のない最も安定した法的地位であり、許否の判断に当たっては特に慎重な審査を行う必要があります。
さらに、国益要件について、
単に国益に反しないという消極的なものにとどまらず、積極的かつ具体的に当該外国人の永住が日本国に利益をもたらす必要があります。
つまり、「悪いことをしていない」だけでは足りず、「日本にとってプラスである」と言える必要がある、という発想への転換です。ここが全体の土台になっています。
2. 対比表①:許可の要件
| 項目 | 現行(2026年2月24日改訂版) | 改定案 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 審査の姿勢 | 記載なし | 「特に慎重な審査」「積極的かつ具体的に国益をもたらす必要」 | 考え方を明文化 |
| 素行善良 | 法律を守り、社会的に非難されない生活 | ほぼ同じ(「違法行為・迷惑行為の繰り返し」を例示) | 実質的な変更なし |
| 収入 | 「公共の負担にならず、将来安定した生活が見込まれること」のみ | 世帯人数に応じた「日本人世帯の平均収入を上回る水準」に継続して達しているか。「日本人と同等水準以上の経済条件」と明記 | 最大の変更点。ただし案の本文に具体的な金額はありません |
| 世帯の数え方 | 規定なし | 収入を合算できるのは同居かつ同一家計の人のみ。一方、海外に住む扶養親族も「世帯人数」に加算。5人以上はさらに上乗せ | 母国の家族を扶養していると、必要年収だけが上がる |
| 家族滞在などの収入 | 規定なし | 世帯年収に合算しない(資格外活動による例外的収入のため) | 配偶者のアルバイト収入はカウント外 |
| 年金 | 保険料を納めているかのみ | 将来の受給見込額が「上記の年収水準で30年間厚生年金に加入した場合」の水準に達しているか。不足分は金融資産で補填可(若いほど基準は低い) | 完全な新設。国民年金のみの自営業者に不利 |
| 税・社会保険料 | 期限内納付。遅れは消極評価 | 同じ+原則として同一生計世帯単位で審査、過去の滞納処分も消極評価 | 家族の未納も影響しうる |
| 刑罰法令 | 罰金刑・拘禁刑を受けていないこと | 同じ+少年法の保護処分を明記 | 明確化 |
| 在留年数 | 原則10年、うち就労資格または居住資格で5年 | 同じ。+過去10年で「1回の出国で6か月以上」または「通算2年6か月以上」の不在は原則消極評価 | 運用の明文化 |
| 「就労資格」の範囲 | 技能実習・特定技能1号を除く | さらに育成就労・企業内転勤・一部の特定活動も除外 | 企業内転勤だけで働いてきた人は「5年」に算入されない可能性 |
| 在留期間 | 最長の在留期間(3年でも当面OK) | 同じだが、3年での代用に期限(下記の経過措置あり) | 5年への変更を早めに |
| 日本語能力 | 要件なし | 「日本語教育の参照枠」B1相当以上。高度人材とその家族、日本の初等・中等教育を通算6年以上受けた人、永住者の子(一定条件)などは対象外 | 完全な新設 |
| 制度・ルールの理解 | 要件なし | 入管庁長官が指定する方法で、「生活・就労ガイドブック」の内容を中心に理解度を確認 | 事実上のテストのような性質のものが新設される可能性 |
| 子どもの就学 | 要件なし | 学齢期の子を小学校・中学校に通わせていること(申請者自身が学齢期なら本人の通学) | 完全な新設 |
| 公共の負担 | ― | 収入要件が免除される類型(日本人・永住者の配偶者や子、難民等)でも、現に公共の負担になっている/なるおそれが現実的なら消極評価。ただし人道的配慮も総合考慮 | 免除組にも実質的なハードル |
| 公衆衛生 | 独立項目として明記 | 独立項目から外れ、国益判断の一要素として吸収 | 位置づけの整理 |
3. 対比表②:10年在留の特例(期間短縮できるケース)
| 対象 | 現行 | 改定案 |
|---|---|---|
| 日本人・永住者・特別永住者の配偶者 | 婚姻3年+在留1年 | 婚姻5年+在留3年 |
| その実子等 | 在留1年 | 在留3年 |
| 定住者 | 5年 | 5年(変更なし) |
| 難民・補完的保護対象者 | 認定後5年 | 認定後5年(変更なし) |
| 高度専門職70点 | 3年 | 3年(変更なし) |
| 高度専門職80点 | 1年 | 1年(変更なし) |
| 特別高度人材 | 1年 | 1年(変更なし) |
| 我が国への貢献がある者 | 5年(別ガイドライン参照) | 5年。別ガイドラインは廃止し、本文に統合 |
| 在留特別許可・上陸特別許可を受けた者 | 規定なし | 特例は適用せず、許可後に原則10年必要(新設) |
4. 対比表③:いつから適用されるか(最重要)
改定案は、2つの基準日を使い分けています。
| 項目 | 適用時期 |
|---|---|
| 収入(年収水準)、公共の負担 | 改定日の6か月前以降に申請され、かつ改定日時点でまだ審査中の案件にも適用 |
| 年金、日本語、制度理解、子の就学、配偶者特例、その他すべて | 2027年(令和9年)4月1日以降の申請から |
| 在留期間「3年」の経過措置 | 2027年3月31日時点で「3年」を持ち、同年4月1日以降初回の申請で、その在留期限までに処分を受ける場合に限り「最長」扱い |
案の原文では「改定日」が空欄(令和8年○月○日)ですが、複数の報道が2026年10月1日の改定を伝えています。仮にそうなると、6か月前は2026年4月1日。つまり、今すでに申請して結果待ちの人でも、収入の部分だけは新しい基準で審査される可能性がある。
ということになります。ここが実務上いちばん影響が大きい部分です。
5. 特に影響が大きい人
- 収入が日本人世帯の平均に届かない人(一部、報道では2024年の日本人世帯平均所得575.2万円が引き合いに出されています)
- 母国の家族を扶養している人(扶養人数だけ増えて年収基準が上がる)
- 配偶者が「家族滞在」で働いている世帯(その収入は合算されない)
- 自営業・フリーランスで国民年金のみの人
- 企業内転勤の在留資格で長く働いてきた人
- 日本人・永住者の配偶者で、そろそろ永住をと考えていた人
- 日本語の学習を後回しにしてきた人
逆に、高度専門職・特別高度人材とその家族、日本の学校に6年以上通った人は、比較的影響が小さい設計になっています。
出典
- 出入国在留管理庁「『永住者』の適正化に係るパブリック・コメントの実施について」
- 永住許可に関するガイドライン改定(案)原文(PDF・全13ページ)
- 永住許可に関するガイドライン改定(案)(概要)
- 永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂・現行版)
- e-Gov パブリック・コメント 案件番号 315000140
免責:本記事は公表資料と報道に基づく整理であり、法的助言ではありません。個別のケースについては、弊所にご相談ください。また本記事は「案」の段階の内容であり、最終的な内容は変更される可能性があります。
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