障害者グループホーム(共同生活援助)開業ガイド|指定申請の要件・流れ・費用を行政書士が解説

障害者グループホーム(共同生活援助)の開業をお考えの方に向けて、開業に必要な指定基準(法人・人員・設備・運営)、指定申請の流れとスケジュール、開業にかかる費用、そして近年の制度改正のポイントまでを、行政書士の視点でわかりやすく解説します。東京都を中心に解説していますが、基準は自治体によって異なる部分があるため、最終的には必ず開業予定地の担当窓口でご確認ください。当事務所では初回相談を無料で承っています。

共同生活援助(グループホーム)とは 

共同生活援助(グループホーム)とは、障がいのある方が地域のなかで日常生活の支援を受けながら、少人数で共同生活を営む「住まいの場」を提供する障害福祉サービスです。1つの住居あたりの利用者数は平均6名程度(厚生労働省概要より)とされており、「世話人」や「支援員」と呼ばれる職員が、掃除などの家事支援や日常生活上の相談支援を行います。また、介護が必要な障がいのある方には、食事・入浴・排せつといった日常生活上の援助を行います。

法律上は次のように定義されています。

「共同生活援助」とは、地域において共同生活を営むのに支障のない障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行うことをいう。

引用:障害者総合支援法 第5条第17項

近年、障がいのある方の「地域移行」が国の方針として進められるなかで、住まいの場であるグループホームのニーズは年々高まっています。社会的意義が大きく、かつ安定した運営が見込めるサービスとして、新規開業を検討する事業者が増えています。

障害者グループホームの3つのサービス形態

障害者グループホームには、提供する介護サービスの形態によって主に3つの類型があります。開業にあたっては、それぞれの違いを理解し、自社が目指す支援のかたちに合った類型を選ぶことが重要です。

形態介護サービスの提供方法特徴
介護サービス包括型グループホームの職員(生活支援員)が提供最も一般的な形態。生活支援と介護を一体的に提供する
日中サービス支援型グループホームの職員が提供(常時の支援体制)重度・高齢の障がい者に対応。日中も含めた常時の支援体制と短期入所の併設が必要
外部サービス利用型外部の居宅介護事業所などに委託介護は外部に委託し、グループホームは生活支援に専念する

このほかに「サテライト型住居」があります。これは本体となるグループホームと連携しつつ、一人暮らしに近い形で生活するタイプの住居です。サテライト型を設けるには、本体として「介護サービス包括型」または「外部サービス利用型」のグループホームが必要です。

障害者グループホームの利用対象者

障害者グループホームは、障がいのある方で、支援を活用しながら地域で生活したいと希望する方が利用対象です。どの形態のグループホームも、原則として障害支援区分にかかわらず利用できます。

ただし、身体障害のある方については、65歳未満の方、または65歳になる前日までに障害福祉サービス等を利用したことがある方に限られる点に注意が必要です。

障害者グループホームの開業は、おおむね次の6つのステップで進みます。それぞれの詳細は後述しますが、まずは全体像を把握しておきましょう。

障害者グループホーム開業までの6ステップ

ステップ1は事業計画の策定です。開業地域を選定し、その地域の指定権者(後述)の情報を収集したうえで事業計画を立てます。ステップ2は法人の設立です。グループホームの開業には法人格が必須です。ステップ3は資金調達で、開業資金と運転資金を準備します。ステップ4は指定基準の確認です。法人・人員・設備・運営の各基準を満たせるかを確認します。ステップ5は物件探しと職員採用です。設備基準を満たす物件を確保し、人員基準を満たす職員を採用します。そしてステップ6が指定申請です。指定権者に申請し、「共同生活援助」の指定を受けることで、ようやく開業できます。

開業の要件・指定基準(※東京都の場合)

障害者グループホームを開業するには、「法人基準」「人員基準」「設備基準」「運営基準」の4つの指定基準をすべて満たす必要があります。これらの基準は開業後も継続して守らなければならず、違反すると減算(報酬の減額)や行政指導、重大な場合は指定取消の対象となります。

①法人基準

開業には法人であることが必要です。法人形態には、株式会社、合同会社、一般社団法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、社会福祉法人などがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

また、定款の事業目的には「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業」などの記載が必要です。すでにある法人で開業する場合、定款にこの記載がなければ、法務局で目的変更登記の手続きが必要となります。必要な記載は設立・開業する事業の内容によって異なりますので、必ず行政の担当窓口にご確認ください

②人員基準

障害者グループホームには、次の職種の職員を配置する必要があります。

管理者は、常勤で1名以上の配置が必要です。管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または併設する他の事業所・施設等の職務と兼務することが可能です。

サービス管理責任者(サビ管)は、利用者が30名以下の場合は1名以上、31名〜60名の場合は2名以上の配置が必要です(以降、利用者30名ごとに1名を加算)。1名のサービス管理責任者が担当できる利用者は30名までである点に留意してください。サービス管理責任者は採用が最も難航しやすい職種のため、早めの確保が開業成功の鍵となります。

世話人は、常勤換算で利用者6名に対して1名以上が必要です。ただし日中サービス支援型グループホームでは、利用者5名に対して1名以上の配置が必要です。

生活支援員は、利用者の障害支援区分に応じて、常勤換算で次の数の合計以上を配置します。なお、外部サービス利用型グループホームでは生活支援員の配置は不要です。

  • 障害支援区分3の利用者数 ÷ 9
  • 障害支援区分4の利用者数 ÷ 6
  • 障害支援区分5の利用者数 ÷ 4
  • 障害支援区分6の利用者数 ÷ 2.5

夜間支援従事者は、必要に応じて配置します(夜勤または宿直)。ただし日中サービス支援型グループホームでは、夜間支援従事者を必ず配置しなければなりません。

なお、新規開業の場合は前年度の利用者数が存在しないため、人員数の算定に用いる利用者数は、開業から6か月目までは定員の90%を推定値として用い、7か月目以降は直近の平均利用者数を用います。

③設備基準

設置場所は、住宅地、または住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域である必要があります。入所施設および病院の敷地内に設置することはできません。

最低定員は4名以上です。居室の定員と面積は次のとおりです。本体住居の居室は定員1名(必要と認められた場合は2名も可)、面積は収納設備を除き7.43㎡以上(内法)です。サテライト型住居の居室は定員1名、面積は同じく収納設備を除き7.43㎡以上(内法)です。

1つの共同生活住居あたりの定員は、新規に設置する場合は2〜10人まで、既存建物を活用する場合は2〜20人までです(日中サービス支援型グループホームは2〜20人まで)。1ユニットの定員は2人以上10人以下です。

このほか、居室とは別に、日常生活を営むうえで必要な設備をユニットごとに設ける必要があります。具体的には、従業者を含めた事業所関係者が一堂に会せる食堂・居間、台所、便所、洗面設備、浴室などです。

なお物件は、これらの設備基準だけでなく、建築基準法・消防法・都市計画法などの関連法令もクリアする必要があります。特に「用途変更」や「消防同意」が必要になるケースが多いため、物件は契約前(新築・増改築の場合は着工前)に要件適合を必ず確認してください。物件選定は開業準備のなかで最も重要なポイントの1つです。

運営基準

運営面では、事業の運営に関する重要事項を定めた運営規程の整備、サービス提供記録の作成などが求められます。また、協力医療機関の決定、虐待防止のための体制整備、衛生管理なども必要です。

上記以外にも遵守すべき事項は多数あります。関係法令を遵守し、常に適正な運営を行うとともに、サービスの質の向上に努めることが求められます。自治体によって異なる基準もありますので、詳しくは担当窓口へご確認ください。

指定までの流れとスケジュール

障害者グループホームとして開業するには、指定権者に指定申請を行い、「共同生活援助」の指定を受ける必要があります。指定権者とは指定の権限をもつ自治体のことで、開業地が政令指定都市・中核市の場合は市、それ以外の市町村および東京23区の場合は都道府県が指定権者となります。

指定までの流れ

①ご面談:ご要望やご相談、事業計画などをヒアリングし、お見積りを提示いたします。ご納得いただけた場合にご契約となります。

②要件適合の確認(行政への事前相談等):指定権者(行政)の説明会への参加や、地域生活課等への事前相談を行います。事業計画、建物、人員体制、医療機関との提携など、各要件を確認します。なお【東京都】では令和4年度より、直近1年以内の事業者説明会に参加していること(管理者またはサービス管理責任者が参加)が条件となっています。また、相談シートを作成のうえ来庁相談を行います。

③申請書類等の作成:必要書類の収集や申請書類の作成を行い、申請の準備を進めます。

④申請:役所へ申請します。指定月の前々月末日までには、指定申請書類を揃えて提出する必要があります。

⑤審査・現地確認:書類審査と、行政の担当職員による現地確認が行われます。

⑥指定、事業スタート:多くの場合、指定日は毎月1日となります。

※都道府県によって上記のスケジュールと異なる場合があります。6か月以上の余裕をもったスケジュールで開業準備をすることをおすすめします。

開業準備のスケジュール目安

時期主な実施事項
1年〜6か月前情報収集、行政書士等への相談、事業計画の策定、法人設立、融資相談、求人開始
4か月前物件探し、指定権者との事前協議、職員採用、国保連請求の情報収集
3か月前消防署・建築指導課への事前相談、物件契約、設備・内装工事、協力医療機関探し、入居者募集開始
2か月前消防の現地調査、職員の雇用契約締結、資格証等の取り寄せ、指定申請書類の提出
1か月前運営基準を満たす準備、職員研修、備品購入、請求ソフト契約
開業初月入居者との利用契約、国保連請求システム登録、サービス提供開始

障害者グループホーム開業に必要な費用・資金調達

開業にあたっては、初期費用と当面の運転資金の両方を準備する必要があります。

開業にかかる初期費用

開業に必要な初期費用は、開業予定の地域や物件の条件(所有・購入・賃貸)などによって大きく異なります。主な費用項目は次のとおりです。法人設立費用(定款認証費用、登録免許税など)、物件に関する費用(賃貸の場合は敷金・礼金、開業までの家賃、内装・改修工事費、仲介手数料など)、職員採用費用(求人広告費、開業までの人件費)、ライフライン(電気・水道・ガス)、電話・インターネット回線、入居者の生活に必要な家具・家電・調理器具・食器などです。特に物件の改修費(バリアフリー対応や消防設備の設置)が総額に大きく影響します。

運転資金の準備

注意が必要なのが運転資金です。国保連(国民健康保険団体連合会)から障害福祉サービスの報酬が入金されるのは、サービス提供月の翌々月15日です。たとえば4月分のサービス報酬が入金されるのは6月になります。

つまりキャッシュフロー上、開業からの2か月間は報酬収入がない状態となります。さらに、開業初月から入居定員を満たせるとは限りません。これらを踏まえ、数か月分の人件費や家賃をまかなえる余裕をもった運転資金を準備しておくことが重要です。

活用できる資金調達・補助金

開業資金や運営資金を融資で準備したい場合は、日本政策金融公庫の新規開業資金、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の福祉貸付事業、民間金融機関(銀行・信用金庫など)の融資といった選択肢があります。また、国・都道府県・市区町村による各種補助金・助成金が利用できる場合もあります。制度は地域や年度によって変わるため、お近くの各窓口でご確認ください。

※融資・補助金の活用可否や金額は事業計画や審査によって異なります。資金計画については、必要に応じて金融機関や専門家にご相談ください。

障害者グループホームの収益と運営のポイント

事業を継続し、入居者の生活の場を守り続けるためには、安定した収益の確保が欠かせません。まずは収入と支出の構造を理解しておきましょう。

収入の柱となるのは、障害福祉サービス等報酬の「基本報酬」と「加算」です。基本報酬は利用者1人に対して1日サービスを提供することで得られ、加算は一定の要件を満たすことで基本報酬とは別に得られます。一方、指定基準を満たさない場合には「減算」として基本報酬が減額されます。減算は利用者の不利益になるだけでなく事業所の収入も減らすため、基準を守った運営が不可欠です。

支出の主な項目は、毎月発生するものとして家賃(賃貸の場合)、人件費、水道光熱費、通信費、食材費・日用品費などがあり、都度発生するものとして設備の点検・修繕費や消耗品費などがあります。

なお、家賃や食材費・水道光熱費・日用品費などは、実費相当額を利用者から徴収できます。ただし、実費を超えて請求したり差額を事業所の利益にしたりすることは認められていません。近年、食材費の不適切な徴収が問題となった事例があり、運営指導でも厳しく確認される傾向にあります。実費徴収が認められる範囲や、利用者への説明・同意の方法を適切に整えておきましょう。

障害福祉サービスの報酬は3年ごとに改定されます。直近では令和6年度(2024年度)に改定が行われ、次回は令和9年度(2027年度)に予定されています。


近年の制度改正で押さえておくべきポイント

令和6年度(2024年度)の報酬改定をはじめ、近年は運営に関わる重要な改正が相次いでいます。これから開業する事業者が特に押さえておくべきポイントを整理します。

業務継続計画(BCP)の策定は、令和6年4月から完全義務化されています。自然災害発生時のBCPと、新型インフルエンザ等の感染症発生時のBCPの2種類を策定し、研修・訓練を実施する必要があります。未策定の場合は「業務継続計画未策定減算」の対象となるため、開業前の整備が必須です。

地域連携推進会議の設置・開催は、令和6年度は努力義務、令和7年度(2025年4月)以降は完全義務化されています。これは、支援の質を確保するために、地域の関係者など外部の目(または第三者評価)を定期的に事業所運営へ取り入れる取り組みです。これから開業する事業所は、義務として対応する必要があります。

同性介助の原則は、令和6年度報酬改定で努力義務とされました。利用者本人が希望していないにもかかわらず異性による介助が行われることのないよう配慮が求められます。男性寮・女性寮・混合など、ホームの方針をあらかじめ決めたうえで職員を採用することが望ましいでしょう。

このほか、虐待防止研修や虐待防止委員会の設置、身体拘束適正化のための取り組みなども求められています。これらの体制は開業時から整えておく必要があります。

※制度は改正される場合があります。最新の内容は厚生労働省や各自治体の公表情報をご確認ください。


利用者(入居者)の募集方法

開業の見込みが立ったら、利用者の募集を始めましょう。障害者グループホームは障害福祉サービスのため、申し込み後すぐに入居できるわけではなく、受給者証の申請などの手続きや審査に時間がかかります。募集開始が遅れると、開業後しばらく入居者がいないという事態にもなりかねません。

一方で、「利用者を募集したのに開業が間に合わない」という事態も、利用希望者や関係機関からの信頼を損なうため避けなければなりません。募集開始のタイミングには注意が必要です。なお、指定を受ける前の大々的な利用者募集を制限している指定権者もあるため、事前に確認しておきましょう。

利用者を集めるには、グループホームを必要とする方に情報を届けることが大切です。インターネットを使う方法としては、Webサイト、SNS、Web広告などがあります。インターネット以外では、自治体の障害福祉窓口、特別支援学校、相談支援事業所、他の障害福祉サービス事業所、医療機関の地域連携室などへ開業を周知し、チラシを置かせてもらったり見学会を開いたりする方法が有効です。

よくある質問(FAQ)

グループホームを開業するために必要な資格はありますか?

法人の代表者に資格は必要ありません。ただし、配置する職員のうちサービス管理責任者には、一定の実務経験と研修修了が要件として定められています。世話人・生活支援員には資格要件はありませんが、福祉への熱意と適切な支援ができる能力が求められます。

物件はどのような基準を満たす必要がありますか?

居室面積(収納を除き原則7.43㎡以上)、設備基準のほか、建築基準法・消防法・都市計画法などの関連法令を満たす必要があります。特に用途変更や消防同意が必要になるケースが多いため、物件は契約前に必ず要件適合を確認してください。

サービス管理責任者(サビ管)はどう確保すればよいですか?

サビ管は採用が難航しやすい職種です。他事業所からの転職者の採用、研修修了者の紹介、自社職員の育成(実務経験を積ませて研修受講)など、複数のルートを検討しましょう。サビ管が不在では指定申請が受理されません。早めの確保が重要です。

開業にはどのくらいの期間が必要ですか?

一般的には準備開始から開業まで半年〜1年程度を見込みます。人員確保、物件契約、消防・建築手続き、運営規程の整備など準備項目が多いため、早めの着手をおすすめします。

開業に必要な初期費用はどれくらいですか?

物件の条件によって大きく異なりますが、物件取得費・改修費・備品費・採用費などを含めると、相応のまとまった資金が必要です。特に物件の改修費(バリアフリー・消防設備)が総額を左右します。さらに、報酬入金が開業2か月後となるため、運転資金も合わせて準備する必要があります。具体的な金額は事業計画に応じて試算しますので、お気軽にご相談ください。

開業後に多い指摘・減算リスクは何ですか?

よくあるのは、人員配置基準の未達(特に夜間体制)、BCPや虐待防止研修の未実施、各種記録(支援記録・会議録・研修記録)の不備です。これらは報酬の返還につながる場合があるため、運営開始前に体制を整えておくことが大切です。

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