指定就労継続支援事業所のガイドラインのまとめ!令和7年11月
ガイドラインの要点
厚生労働省は、令和7年11月28日付で、都道府県、指定都市、中核市(以下「指定権者」)に対し、指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営指導に関する新たなガイドラインを通知しました。本ガイドラインは、令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定を踏まえ、就労継続支援A型における質の確保・向上と、B型における自立支援給付費による工賃補填といった不適切な運営への対応を強化することを目的としていています。
ガイドラインの要点をまとめてみました。
■引用元:指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて(障障発 1128 第 1 号令和7年 11 月 28 日)

ガイドラインの背景と目的
今回のガイドラインが発出された背景には、障害者の自立生活支援を目的とする就労継続支援事業において、一部で不適切な運営実態が指摘されています。具体的には・・・・
• 就労継続支援A型: 業計画に沿って生産活動から最低賃金以上を支払うことができているか。
• 就労継続支援B型: 利用者に支払うべき工賃を、事業収入ではなく自立支援給付費から補填してないか。
他に共通するところだと、利用者の不適切な誘因行為、会計の不明確さ、生産活動が不適切など 挙げられています。
この状況を踏まえ、本ガイドラインは指定権者が事業所の新規指定審査と既存事業所の運営状況の把握・指導を適切に行うための具体的な指針を示すことを目的としています。
新規指定に関するガイドライン
事業所の新規指定にあたり、指定権者は事業者が適切なサービス提供能力を有するかを総合的に審査する重責を担うため、安易な事業参入を防ぎ、質の高いサービスを確保するための具体的な審査プロセスと観点が示されました。
1. 指定権者の役割
• 総合的な審査: 申請者が障害者総合支援法等の関連法令、障害福祉制度、就労支援事業会計といった運営に不可欠な知識を有しているか、利用者の能力向上に資する支援内容か、安定収益が見込める生産活動計画かを厳しく審査する。
• 不適切勧誘への注意喚起: 「知識がなくても高収益」などと謳い、安易な事業開設を勧める者に関する情報を把握した場合、関係機関での情報共有や厚生労働省への情報提供が望ましいとされる。
• 直接対話の原則: 審査や面談は、コンサルティング会社や代理者ではなく、法人の代表者、管理者、サービス管理責任者等(法人の代表者等)と直接行うことを原則とする。
• 運営体制の一貫性: 審査時に面談した法人の代表者等が、指定後最初の運営指導まで一貫して事業運営を行うことが望ましいとされ、その旨を申請者に予め伝えることが求められる。
2. 新規指定の審査プロセス
指定権者の実態に応じて変更があると思いますが、以下のようなスケジュール例が示されました。
そのため最低6か月以上から準備が必要となってきます。
| 実施時期の目安 | 取組項目 |
| 指定の5ヶ月前 | ア. 事前説明・確認 |
| 指定の4ヶ月前 | イ. 事業計画書等審査 |
| 指定の3ヶ月前 | ウ. 専門家会議審査 |
| 指定の2ヶ月前 | エ. 指定申請審査 |
| 指定の1ヶ月前 | オ. 現地審査 |
| カ. 指定 |
3. 主要な審査項目
新規指定の主な審査項目についてまとめてみました。
事業計画書・収支予算書の審査
事業運営の根幹となる事業計画書等の審査では、以下の点が重要視されます。他事業所の書類の流用は原則認められず、虚偽記載が判明した場合は指定取消しの対象となります。
• 地域ニーズとの整合性:
◦ 開所予定地の市区町村に事業計画を事前に説明し、地域の障害福祉計画や既存事業所との重複がないか等について確認を行う。
◦ 申請者は、市区町村との協議議事録等を提出し、指摘事項を改善した上で申請を行う。
• 利用者の募集方法の適切性:
◦ 金品や物品の提供(商品券、電子機器等)を謳う募集は不適切。
◦ 交通費や昼食費の無料化を謳い、利用者の意思決定を歪める誘因行為は不適切。
◦ 高賃金・高工賃を確約するような誤解を与える表現(例:「1日来たら〇〇円」)は不適切。
• 生産活動の適切性:
◦ 公費による就労支援として適さない可能性のある活動(例:eスポーツ、数回の水やり、麻雀教室の手伝い、ただ居るだけの活動)については、厳しく審査する。
◦ 確認の観点
▪ 具体的な生産活動の場面があるか。
▪ 一般就労に必要な能力向上が見込まれるか。
▪ 安定した生産活動収入を得られるか。
▪ 地域に習得した能力を活かせる労働市場があるか。
• 在宅支援の適切性:
◦ 在宅支援は、重度障害等で通所が困難な者が対象であり、市区町村が支援効果を認めた場合に限定される。
◦ 単なる自習など、就労支援の実態がない不適切な運営を防ぐため、運営規程に訓練・支援内容を明記し、緊急時対応計画(職員が駆けつけられる体制)などを確認する。
• 収支計画の実現性:
◦ 「生産活動シート」 の活用が推奨される。このシートを用いて、生産活動収入が利用者の賃金・工賃を支払える水準にあるか、中期的な事業継続性があるかを確認する。
◦ 取引先の情報、受注単価、受注数量など、収入見込みの具体的な根拠資料(業務委託契約書、確約書等)の提出を求める。
◦ 自立支援給付費による賃金・工賃の補填はできないことを改めて周知する。
• 既存事業所の運営状況:
◦ 申請者が既に他の事業所を運営している場合、その事業所に行政指導・処分歴がないか、経営改善計画書の提出状況、生産活動収支などを確認し、問題があれば解消後の再申請を促す。
専門家会議審査
事業計画書等の妥当性を多角的に評価するため、以下の専門家からなる会議での審査が効果的であるとされる。
• 専門家例: 協議会構成団体、地域の優良事業所、中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、公認会計士、弁護士、行政書士など。
現地審査
申請書類に基づき、設備基準や消防法関連の設備設置が完了しているか、運営に必要な帳票類が整備されているかなどを現地で確認する。
既存事業所の運営状況把握・指導
今回のガイドラインでは既存の事業所についても言及しています。指定権者は、定期的な運営指導を通じて事業所の実態を把握し、不適切な運営があれば監査に切り替え、是正勧告や指定取消し等の厳格な対応をとる必要があるとの方向性を示しています。
【運営指導の基本方針】
• 実施頻度: 原則として3年に1回。ただし、新規指定事業所へは概ね6ヶ月を目途に実施する。
• 実態把握の手段:
◦ 運営指導や監査での聞き取り、資料提出。
◦ 「生産活動シート」 の提出を求め、生産活動収支や賃金・工賃支払状況を継続的に把握する(毎年度の体制届出時なども想定)。
◦ WAMネット(障害福祉サービス等情報公表システム)、法人の財務諸表等電子開示システム等の公開情報を活用する。
【主要な確認・指導項目】
以下、項目と運営指導の観点についてまとめてます。
| 項目 | 確認・指導の観点 |
| 管理者業務 | 事業所に関する質問に管理者が適切に回答できるか。一元的な管理責任を果たしているか。 |
| 人員配置 | 名義貸しや常態的な欠員がないか。職員の頻繁な離転職がないか。 |
| 誘因行為 | 生産活動収入以外の金銭・物品の提供を広告等で行っていないか。 |
| 情報公表 | WAMネットへの情報公表義務を果たしているか。A型事業所はスコア表を全て掲載しているか。財務状況を確実に公表しているか。 |
| 生産活動の実態 | 事業計画書等で報告された生産活動が実際に行われているか。 |
| 生産活動収入と会計 | - 福祉事業会計と生産活動会計が明確に区分されているか。 自立支援給付費が賃金・工賃に充当されていないか。(運営法人が発注元となり、給付費を原資に業務委託費を支払う等の手口に注意) 生産活動収入が賃金・工賃の総額を上回っているか。 |
| 支援内容の適切性 | 個別支援計画の作成・モニタリングが適切に行われ、利用者の能力向上に資する訓練が実施されているか。 |
| 賃金・工賃の支払い | 生産活動収支から適正に支払われているか。「生産活動シート」等で確認し、不足分を給付費等で補填していないか精査する。 |
| 経営改善計画書(A型) | 提出された計画に実現可能性があるか。根拠資料に基づき確認し、その後の実行状況を追跡する。 |
| 在宅支援の実態 | 要件を満たしているか、適切な生産活動が提供されているか、支援効果が認められるかを個別支援計画やサービス提供記録で確認する。 |
| 施設外就労の実態 | 職員の同行、個別支援計画への記載等の要件を満たしているか。特に、関係会社との取引価格が適正かどうかに留意する。 |
まとめ
最後に今回のガイドライン重点項目として以下の5点がポイントをまとめています。
1. 新規指定審査の厳格化: 指定権者は、申請者の事業運営能力を多角的に審査することが求められる。具体的には、事業計画書や収支予算書に基づき、生産活動の具体性、収益性、利用者への支援内容の適切性を詳細に確認する。特に、eスポーツや単純作業など、就労能力向上に寄与しない可能性のある活動は慎重に評価される方向へ。
2. 専門家会議の活用推奨: 事業計画の妥当性を評価するため、協議会等を構成する団体や地域の模範となる優良事業所、中小企業診断士、社会保険労務士、弁護士、行政書士等の専門家で構成される「専門家会議」を設置し、経営的・専門的観点からの審査を行うことが推奨されている。
3. 既存事業所への指導強化: 新規指定後約6ヶ月を目途に初回の運営指導を実施し、生産活動の実態や会計の透明性を確認する。特に、福祉事業会計と生産活動会計の厳格な区分、および自立支援給付費が賃金・工賃に不正に充当されていないかの確認が重要視される。
4. 「生産活動シート」の導入: 事業所の生産活動内容、収支、賃金・工賃の支払い状況等を可視化し、客観的に把握するためのツールとして「生産活動シート」の活用が明記されました。これは新規指定時、運営指導時、毎年の体制届出時など、継続的な実態把握に用いられる。
5. 不適切行為への厳格な対応: 利用者に対し金品を提供するなどの誘因行為や、名義貸しによる人員配置基準の形骸化、虚偽申請など、不適切な運営が確認された場合は、監査への切り替えや指定取消しを含む厳格な措置を講じるよう求めています。
最後に・・・・
今回、ガイドラインで厳格化されましたが、ネット広告などを見ていますと、就労能力の向上に向いていないと思われる単純作業を謳った広告や、障がい福祉事業は安定して儲かりますといった広告に正直疑問を感じていました。個人的には利用者のための事業所であってほしいと思っていたのでよかったのではないかと思います。とはいえ、あまり厳格化されてしまっても、本当に地域貢献、社会貢献を目指してしてる事業所の新規参入の障壁となることや既存事業所の負担が増えないようにしてほしいです。
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