【児童発達支援・放デイ事業者向け】こども性暴力防止(日本版DBS)施行ガイドラインの重要ポイント解説
2024年6月に「こども性暴力防止法(日本版DBS)」が成立し、こども家庭庁よりガイドラインの全容が公表されました。児童発達支援や放課後等デイサービス(以下、放デイ)の運営者にとって、本制度への対応は単なる事務作業の追加ではなく、事業の存立基盤に関わる最重要課題です。
児童福祉分野のコンプライアンス・アドバイザーの視点から、現場が直面するリスクと、施行までに完了すべき実務対応を徹底解説します。

なぜ今、この法律が必要なのか
こどもに対する性暴力は、その権利を著しく侵害する「極めて悪質な人権侵害」であり、生涯にわたり心身の発達に深刻な影響を与える回復し難い重大な加害行為です。
特に児童福祉の現場は、従事者が指導を通じて「支配的・優越的立場」に立ち、継続的に密接な人間関係を築き、かつ保護者の監視が届かない「特別な社会的関係」の中にあります。ガイドライン(Ⅰ)では、こうした場において性暴力被害を生じさせることは、事業の目的に根本から反するものであると断じています。
事業者は、こどもの安全確保が「事業運営の目的そのもの」であることを再認識し、性暴力を断固拒否する姿勢を組織全体で示す極めて重い責務を負っています。


児童発達支援・放課後等デイサービス(放デイ)は「義務」対象
本制度では、施設・事業の形態によって「義務(学校設置者等)」と「任意(認定事業者)」に分かれます。ここで重要なのは、「指定障害児通所支援事業」は法律上の「義務対象」に含まれるという点です。
以下の事業を運営する事業者は、制度の実施が義務付けられます。
| 分類 | 対象となる具体的な事業(義務対象) |
|---|---|
| 指定障害児通所支援事業 | 児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援 |
特に、保育所等訪問支援や居宅訪問型は、より閉鎖的な環境が生じやすいため、厳格な対応が求められます。
• 施行日:令和8年(2026年)12月25日
この日を境に、全従事者の犯罪事実確認(DBSチェック)および安全確保措置の体制整備が法的な義務となります。
「犯罪事実確認」の対象となる従事者の定義
犯罪事実確認の対象となるのは、ガイドラインで「教員等」と定義されるスタッフです。これは職名に関わらず、実態として以下の「3要件」をすべて満たす者が該当します。
判断の3要件と放デイ等の特性
1. 支配性:指導や介助を通じて優越的立場に立つこと。放デイ等では、コミュニケーションに課題を抱える児童が多いため、この関係性が強固になりやすい特性があります。
2. 継続性:日常的、定期的、または反復継続して接すること。療育や訓練は長期にわたるため、必然的に該当します。
3. 閉鎖性:第三者の目が届かない状況。ADL(日常生活動作)支援、特に入浴や排せつ介助、送迎車内などは極めて閉鎖性が高い環境です。
職種別の判断基準(図表6を基に作成)
事業所内の全スタッフについて、以下の基準で「対象」か「対象外」かを特定してください。
| 職種 | 判定 | 判断のポイント(第三者の目の有無) |
|---|---|---|
| 指導員・保育士 | 対象 | 個別指導や介助で閉鎖環境が生じるため、原則全員対象。 |
| 事務職員 | ケースバイケース | 事務専念なら対象外。保護者面談中に別室で児童の相手をする等の実態があれば対象。 |
| バス運転手 | ケースバイケース | 添乗員がおらず1対1になる状況があれば対象。常に他の職員が同乗し、第三者の目が確保されているなら対象外となり得ます。 |
| 調理員 | ケースバイケース | 配膳時等に職員の同席がない環境で児童と接するなら対象。調理室にのみ留まるなら対象外。 |
| 清掃員 | ケースバイケース | 開所中に日常的に接するなら対象。閉所後のみの清掃なら対象外。 |
「特定性犯罪」と確認の仕組み(日本版DBSの核心)
犯罪事実確認で照会されるのは、法で定められた「特定性犯罪」です。これには刑法上の罪だけでなく、「児童ポルノ法」「性的姿態撮影等処罰法(盗撮等)」、さらに各都道府県の「迷惑防止条例(痴漢、のぞき見、グルーミング等)」が含まれます。
特定性犯罪事実該当者の判定期間
以下の期間内にある者が、システム上のヒット対象となります。
• 拘禁刑(旧懲役・禁錮):執行終了等から20年間
• 執行猶予者:裁判確定日から10年間
• 罰金刑:執行終了等から10年間
条例違反であっても「罰金刑」以上の前科があれば、原則として10年間はこどもに直接接する業務に就くことができなくなります。
現場で防ぐべき「不適切な行為」の具体例
性暴力は、突然発生するのではなく、その前哨となる「不適切な行為」からエスカレートする傾向があります。また、加害者が児童の抵抗感を徐々に下げる「性的手なずけ(グルーミング)」の手口にも注意が必要です(Ⅱ-2)。
不適切な行為のカテゴリー別リスト
• 私的なやり取り:私的なSNSやオンラインゲームのアカウント交換、2人きりでの面会。
• 密室状態:用務がないのに別室に呼び出す、不必要に更衣室等へ立ち入る。
• 過度な身体接触:必要以上に長時間抱きしめる。スタッフが過度に肌を露出する行為(性的手なずけの一種)。
現場運営への実務アドバイス
放デイ等の現場ではADL介助があります。業務上の接触と「不適切な行為」を区別するため、以下の運用を推奨します。
• 原則:可能な限り「閉鎖環境」を避け、常に他の職員から見える状況を作る。
• 代替行動の提示:児童が膝に乗るなどの接触を求めてきた際、無下に断るのではなく、「膝の上ではなく、隣に座って手を繋ごうね」と誘導し、安心感を提供しつつ閉鎖性を回避する(ガイドラインⅡ-2-iv-ウ)。
• 事前合意:保護者に対し、療育上必要な身体接触の範囲をあらかじめ書面で説明し、共通認識を持っておくこと。
事業者が講ずべき5つの安全確保措置
施行までに、単なる「犯罪歴チェック」を超えた、以下の体制構築が求められます。また、事業者は「安全確保措置」の一環として、就業規則や服務規律等のルールを整備・周知することが求められます。特に、性犯罪歴が判明した際の対応や、調査への協力義務などを明文化しておくことが、法的なトラブルを避けるために極めて重要です。
構築ステップ・チェックリスト
1. 体制整備(責任者の選任):犯罪事実確認を計画的に実施する責任者を決める。
2. 早期把握(観察・面談):日常の観察に加え、児童・保護者への定期的な面談やアンケートを実施する仕組みを作る。
3. 相談窓口の設置:内部窓口だけでなく、自治体等の外部窓口を周知する。
4. 対処規程(児童対象性暴力等対処規程)の作成:
◦ 調査の手順(フロー)の確立
◦ 被害児童の保護・支援ルール(加害者との接触回避等)の策定
5. 研修の実施:不適切な行為の範囲や、情報管理について全従事者を教育する。
6. 情報管理:機微情報の取り扱い
犯罪事実確認記録は、極めて秘匿性の高い個人情報です。
• 情報管理規程の策定:犯罪事実確認の申請を行う前に、必ず規程を策定・整備しなければなりません(Ⅷ-2)。
• 目的外利用の禁止:採用判断や防止措置以外の目的(誹謗中傷、嫌がらせ等)に情報を使用することは厳禁です。
• 社会的な信用の失墜:万が一情報が漏えいした場合、法的な罰則のみならず、事業所としての社会的信用を完全に失うことになります。
7. まとめ:こどもの笑顔と安心を守るために
「こども性暴力防止法」への対応は、単なる法令遵守(コンプライアンス)に留まりません。それは、「この事業所はこどもを確実に守っている」という社会的信頼を可視化し、支援の質を向上させる絶好の機会でもあります。
コンプライアンスを徹底している事業所であることは、これからの時代、保護者が選ぶ際の最大の「付加価値」となります。まずは、本ガイドラインの内容を全スタッフで共有し、日々の支援の中に潜むリスクを洗い出すことから始めてください。
こどもたちの笑顔と安心を守るため、今から着実な準備を進めていきましょう。

参考:こども性暴力防止法施行ガイドライン 令和8年1月 こども家庭庁
↓こども家庭庁ホームページ
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